オレ様専務を24時間 護衛する
自らキッチンで珈琲を淹れ、
カップ片手にリビングの窓際へ移動した。
室内は24時間空調管理されているが、
屋外は今日も少し暑い陽気のようだ。
夏から秋に移りゆく空模様。
所々にいわし雲が漂っている。
ひと息ついた俺は携帯を取り出し、
初めて見る番号へと電話を掛ける。
「はい、もしもし?」
「あっ、あの…」
生まれて初めて『女』に電話をしている。
仕事で掛けた事はあるが、
プライベートではこれが初めてである。
笑えるくらい緊張していた。
すると、
「もしかして、御影さんですか?」
「あっ、はい。初めまして…」
「はい、初めまして。希和……えっと、松波君から伺ってます。今日の事ですよね?」
「はい」
電話越に聞こえて来た声は、
少し甲高く、女特有の甘ったるい感じに聞こえた。
しかも、奴の事を『男』だという前提で……。
「えっと、私はどこへ伺えば宜しいのですか?」
「あぁ、えぇっとですね……」
俺にバレているとは知らないこの女は
平然と今後の事を尋ねて来た。
俺はそれに対して……―――……。