オレ様専務を24時間 護衛する
「すみません」
「あっ、はい」
玄関ホールを抜け、案内役のスタッフの足を止めさせる。
俺の声に振り返ったスタッフは
俺と松波の一挙手一投足を見つめている。
「平気か?」
「ッ?!………あまり、平気では……」
苦虫を噛み潰したような表情の松波。
「痛むのか?」
「あっ、いえ」
腕を組んでいても分かるほど、ぎこちない。
履き慣れないというヒールのせいで足が痛むのかと思ったが
……そうではないらしい。
なら、何んだと言うんだ?
俺はスタッフに気付かれないようにそっと松波に近づくと、
「すみません、緊張のせいで上手く歩けません。膝がカクカクして……」
―――――マジで言ってんのか?……コイツ。
「殴られたいか?」
「はい、出来れば。そうでもしないと、正気を保てそうにありません」
「フッ、お前はバカか」
根っからの体育会系。
殴るという脅迫めいた言葉が通じない。
「あの………?」
「あ、すみません。もう大丈夫です」
俺はスタッフに似非紳士スマイルを振りまき、会釈した。
そして―――――。