オレ様専務を24時間 護衛する
俺はこういう状況のかわし方をよく知っている。
歴代の女どもが、
『私に任せて』と意気揚々にしていたから。
それは、見せつけるではなく『煽る』という行動だと。
「下を見るな」
「へ?」
「俺だけ見てろ」
「ッ?!」
「いいか、こうやって見せつけてやるんだ」
「ッ?!////////」
松波の右側に立っている俺は、
腰を抱き寄せている左腕を引き寄せ、
松波の背中に左手を添え、身体を反転させた。
そして、向かい合う松波の左耳に唇を寄せ、
今にも触れそうな距離でこう囁く。
「職務を放棄するとどうなるか……解ってるよな?」
「ッ?!」
「今、この場で、背中のファスナーを下げてもいいんだぞ?」
「なっ?!!」
「まぁ、下ろした所で大して変わらないだろうが」
「ッ!!!!」
俺の売り言葉に反応して、
キッと睨むように振り返った。
松波にしか聞こえないように囁いた俺を
周りの視線は違った風に見えるらしい。
―――――仲睦まじい2人に。
俺の方に視線を向けた事で今にも唇が触れそうな距離。
周りからのざわめきもきっとそれを思っての事。
そんな事、微塵も考えていない松波に……。