オレ様専務を24時間 護衛する
その後は両親と共に侯爵夫妻と食事をし、
深まる夜を過ごしていた。
そして、俺の計画が途中から狂ったのは言うまでもない。
母親が侯爵夫妻に俺の『婚約者』だと説明したお陰で
俺と松波はいつの間にか、婚約者という関係にさせられた。
自暴自棄になった俺は、結構なハイペースで酒を飲み
2時間が経過した頃、
酔い覚ましの為にテラスへと出た。
サラサラと肌に伝わる風が心地良く、
過ぎゆく夏を惜しむかのように虫たちが騒ぐ。
目を閉じて、そんな情緒を味わっていると
「あの、隣りいいですか?」
「?」
瞑っていた目を開け、声のする方に視線を向けると
黒々したストレートの髪の女性が1人。
ワイングラス片手に俺の隣りに立っていた。
テラスの柵に凭れていた俺は、
彼女の足音に全く気付かなかった。
いつもみたいに近寄ってくる女どもみたいに
甲高い声ではないが、
視線は女性特有のモノに見える。
俺は無意識に距離を保とうと
「すみません、これで失礼します」
そうお決まりの言葉を告げ、
軽く会釈した―――――次の瞬間!!