オレ様専務を24時間 護衛する


「何の真似だ」

「………」


俺の行く手を阻むかのように俺の腕をギュッと掴む女。


酒が入っているのと、

腹の虫の居所が悪いのもあって

俺は似非紳士の仮面を簡単に捨て去る。


「貴様、俺様に触れてタダで済むと思うな?」

「フフッ、相変わらず、俺様なのね」

「は?」


俺の声音にびくりともせず、

『相変わらず』と言いやがった、この女。


って事は、俺の過去を知っているという事か?

だが、目の前の女をジッと見据えても記憶にない。



「私の事、覚えてない?」

「………」


やはり、どこかで会ったらしい。

けれど、記憶にないモノは仕方がない。


ってか、普通に考えておかしいだろ。


「それ、今の流行り?っていうか、だいぶ前に流行ったよな」

「へ?」

「『私の事、覚えてない?』っていう、ナンパの常套句」

「ッ?!」

「それとも、今どきのオレオレ詐欺ならぬ、新手のワタシワタシ詐欺ってやつか?」

「なっ?!!」


俺の言葉にあからさまに憤慨した。

そんな女を横目に見て、その場を去ろうとすると、


< 361 / 673 >

この作品をシェア

pagetop