オレ様専務を24時間 護衛する


「これにも………見覚えが無いですか?」


少しばかり切なそうな声で俺の足を止めさせた。

一瞬、視界の隅に映ったそれが、

俺の足を止めるには十分で……。



「…………それ」

「あ、覚えてますか?」

「………」


女の手のひらに乗せられていたのは

小さな星が飾られたヘアピンだった。


俺の記憶が確かなら、

そのピンは間違いなく……あの子の物で。



「それで?」

「へ?」

「そのピンが見覚えあったとして、それで、俺に何の用?」

「えっ……それは………」


別にどうこうしようという問題ではないのかもしれないが、

さすがに今の俺、動揺している。


15年以上もの間、ずっと忘れる事さえ出来ずに

胸の奥でずっと燻っていた感情。


俺は今もあの子の事を……。



突然、ヘアピンを突き出されても

正直、どうしていいのか分からないし、

目の前の女があの子だという確信が持てない。


あの子の思い出を壊されたくなくて

無意識に防御反応が出てしまう。


それに、あの時、

俺はあの子にフラれたんだ。


< 362 / 673 >

この作品をシェア

pagetop