オレ様専務を24時間 護衛する
「これにも………見覚えが無いですか?」
少しばかり切なそうな声で俺の足を止めさせた。
一瞬、視界の隅に映ったそれが、
俺の足を止めるには十分で……。
「…………それ」
「あ、覚えてますか?」
「………」
女の手のひらに乗せられていたのは
小さな星が飾られたヘアピンだった。
俺の記憶が確かなら、
そのピンは間違いなく……あの子の物で。
「それで?」
「へ?」
「そのピンが見覚えあったとして、それで、俺に何の用?」
「えっ……それは………」
別にどうこうしようという問題ではないのかもしれないが、
さすがに今の俺、動揺している。
15年以上もの間、ずっと忘れる事さえ出来ずに
胸の奥でずっと燻っていた感情。
俺は今もあの子の事を……。
突然、ヘアピンを突き出されても
正直、どうしていいのか分からないし、
目の前の女があの子だという確信が持てない。
あの子の思い出を壊されたくなくて
無意識に防御反応が出てしまう。
それに、あの時、
俺はあの子にフラれたんだ。