オレ様専務を24時間 護衛する
京夜side
パーティー会場から出た俺らは、
両親が用意した車で自宅へを向かった。
専属の運転手の運転は、
超ウルトラ安全運転と言っても良いほど、
滑らかな走行で揺れが極端に少ない。
まぁ、高級車特有の乗り心地だともいうが。
助手席の松波から
何か話し掛けられているのは感じていたが、
言葉の意味どころか、
いつ話し掛けられているのかさえ分からず、
時折、耳に届いたような気がしても、
ただの雑音にしか聞こえなかった。
俺は、さっきの女の言葉が頭から離れず、
手渡されたモノの存在が
心の奥に密かに仕舞い込んだパンドラの箱の鍵を
簡単に開けてしまうのではないかと、
心が揺さぶられて仕方なかった。
『何故、今頃になって―――』
そればかりが気になってしょうがない。
テラスの窓際にいた松波にそれを悟られたくなくて、
俺は無意識に内ポケットに仕舞い込んだ。
そして、今も尚、仕舞い込んだまま
俺の心臓に訴えるみたいに存在する。
何故、受け取ってしまったのか。
何故、無視出来なかったのか。
何故、つき返せなかったのか。
今さらだが、後悔ばかりが募って行く。