オレ様専務を24時間 護衛する
結局会話すること無く、自宅へ到着。
見慣れた景色に気が落ち着き始めたのか、
背後から話し掛けられている内容が漸く理解出来た。
だが、それに返答する余裕がない。
今後の事を聞かれても、
今の自分がどうしたらいいのか分からないのに
明日以降の事なんて、考える余裕がないんだ。
俺は聞こえないフリをして、自室へと籠った。
そんな俺に呆れたのか、
松波はそれ以降、話し掛けて来なかった。
悪い夢でも見ていたのだろう。
もしかしたら、他人のそら似かも知れない。
いや、だとしたら、コレは何だ?
ベッド上に横たわる格好の俺は、
震え気味の手で内ポケットから取り出した。
――――――――星の形をしたヘアピンを
所々の塗装が剥げていて、
過ぎた年月を感じさせている。
手のひらに簡単に収まるほどの小さなピン。
それをじっと見据え、甦る記憶。
サラサラな黒髪を靡かせ、
空や草花を澄んだ瞳で見つめる仕草。
時折、横髪を留めるピンを触りながら
俺をじっと見据えていた。
………そんな、あの子の姿を。