オレ様専務を24時間 護衛する
そして、ヘアピンと一緒に手渡されたもう1つのモノ。
俺は左手でギュッとヘアピンを握りしめながら、
そのもう1つのモノを内ポケットから取り出した。
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大倉いづみ
080-****-△△△△
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たった2行で綴られたメモ。
けれど、そこに書かれた文字は
俺の心を掻き回す元凶そのモノ。
これを渡して、俺にどうしろと言うんだ?!
紙を持つ手が震えていた。
怒りや困惑といった感情がとぐろを巻いて
身体中を縦横無尽に駆け巡っている。
生まれて初めてと言っていい程の取り乱し様。
自分が愚かに思えてならない。
あんな女一人に心を乱されるとは……。
けれど、心のどこかで高揚している自分がいる。
―――――――俺の事を憶えていてくれたんだ、と。
どんな目的で近づいたのかは解らない。
『懐かしくて』と言っていたが、
本当にそれだけなのか……?
胸の奥に閊えたままの楔を抜くには
やはり、きちんと向き合う事が必要のようだ。
………自室の天井を眺めながら、
俺は心の闇に葬ったパンドラの箱を
もう一度確かめる事を決意した。