オレ様専務を24時間 護衛する
車が走り出しても無言の俺ら。
別に運転手に気を遣っているとかではなく、
ただ、時の流れに身を任せ、
その空気感に俺らの行く末を委ねているのかもしれない。
車が静かに停車した。
自宅マンションに程近い大通り沿いのカフェの前で。
どうしてなのか、言葉で表すのは難しい。
だけど、彼女には自宅を教えたく無かった。
教えてしまえば、手放したくない衝動に駆られる気がして……。
だから、俺は……敢えて大通りで降ろして貰った。
「本当に……ここでいいの?」
「あぁ。少し風に当たって帰るから」
「…………そう」
車から降りた彼女は俺の手を握り、悲しそうな表情を浮かべた。
「そんな顔するな」
「…………」
「日本に帰る日が決まったら連絡をくれ」
「え?」
「空港に迎えに行くから」
「ホント?!」
「あぁ。だから、明日は勘弁してくれ」
「………分かったわ」
彼女の顔からほんの少し笑みが零れた。
人気がまばらにある中、俺はそっと彼女を抱き締めた。
次に逢うまでの充電だと思って……。