オレ様専務を24時間 護衛する
……この状況。
この数日間で何度目だろうか?
恋愛経験の無い俺でも何となく解る。
だが、ここは人通りのあるカフェの前で。
ガラス越しに運転手だって視界に入るのに……。
抱き締めた事だって、
じっと瞳を見つめる事だって、
素の俺にとってはかなり勇気のいる事だ。
さすがに照れるが、今が『夜』という事が俺を後押しする。
すぐ目の前の車内には運転手。
そして、俺の後ろを通りすがる見知らぬ人。
更には、俺らを横目に走り去る車の数々。
きっと、今が昼間なら確実にパパラッチの餌食だ。
そんな事が脳裏を過る中、
俺は彼女の後頭部をそっと支え、
そして、彼女に触れるだけのキスをした。
ゆっくりと唇を離して彼女を見下ろすと、
キョトンとした様子の彼女。
もしかして、俺、期待に応えれてないとか?
俺まで唖然と目を見開いていると、
「フフッ、………大事にしてくれてるのね?」
「へ?」
「……ううん、何でもない」
理由は解らないが、納得したようだ。
「おやすみなさい」
「………おやすみ」
彼女が乗る車が走り去るのを見届け、
自宅マンションへと歩き出した。