オレ様専務を24時間 護衛する
ふと、視界の隅に小さな物が映った。
あっ、あれって、もしかして……?
数分前に2人が口論していたその場所。
彼女が京夜様に投げつけたと思われる小さなもの。
雑踏の中、一筋の光が降り注いでいるかのように
何故か、そこだけしっかりと見えていた。
彼女にとって要らぬ物でも、
京夜様にとっては大事な物だったかもしれない。
私は咄嗟に駆け寄ろうとすると、
「あっ、ダメッ!!」
見知らぬ年配の男性に蹴飛ばされてしまった。
沢山の人が行き交うエントランスで
手のひらに収まるほどの小さなそれが軽やかに弾んで行く。
――――動体視力には自信がある。
幼い頃から武術を習っていただけに、
無意識に身体が動き出す。
私は躊躇することなく駆け寄り、それを拾い上げた。
………ん? えっ、ヤダッ!!
もしかして、壊れちゃった?
留め金部分がプラプラしていた。
他に壊れている所が無いか確かめようと目を凝らすと、
一部の塗装が剥げた部分に何やら文字らしきモノが。
「おいっ!!何してんだよッ!!置いて行くぞ?」
「あっ、はい!!今行きますッ!!」
京夜様の苛立った声に反応して、
手にしたそれを無意識にポケットにしまい、すぐさま彼の後を追った。