オレ様専務を24時間 護衛する
あの男が松波の片思いの相手だろうが、
………俺には全く関係ない。
俺は黙々と料理を口に運んだ。
いつものように松波と共に出社する。
松波は立ち回りが上手いのか、
女性社員に言い寄られてもやんわりかわす。
まぁ、松波にしてみれば可笑しな話だが
俺にしてみれば、そういうかわしかたがあるのかと感心ものだ。
昨日に引き続き決算書類に目を通していると
ふと、妙な事を思い出した。
『あのヘアピンは一体どうなった?』
頭に血が上ってて、すっかり忘れていた。
確か、あの女が俺に投げつけ、床に落ちたのを眺めたよな。
で、その後は……――……。
拾った覚えがない。
昨日のスーツのポケットを確認したくても、ここは会社。
昨日着ていたスーツがある筈ない。
何度思い返しても手にした記憶が無い。
って事は……―――……?!
俺は無意識に立ち上がった。
立ち上がったはいいが、どうこう出来る問題では無い。
後悔のような想いに駆られ、
溜息と共に身体から力が抜けた。