オレ様専務を24時間 護衛する
俺が『ムキ』だと思っていた文字は
ムキでなく、松波の名前の『キワ』だった。
手掘りで刻んだその文字は見方によってはムキに見えるが、
こうして、コイツが手にしているという事は………?
「ん?…………はっ?………はあぁぁぁぁぁぁあぁぁッ?!!」
27年の人生で今一番動揺している。
俺が15年以上も思い続けていたあの子が
今、目の前に……いるって………事か?!!
松波が俺をじっと見つめている。
先程と何ら変わらない視線で。
な、なのに……俺は………。
動揺し過ぎて、手が震え始めた。
落ち着け、落ち着け。
今のはきっと悪い冗談だ。
そうだ、そうに違いない。
苦笑しながら松波に、
「じ、冗談………だよな?」
「これが冗談に見えます?私が事前に名前を掘っておいたとでも?」
「ッ!!」
正気でいられないのは俺の方だ。
頭が真っ白になり、身体に力が入らない。
感覚の無い足で部屋中をウロウロと歩き回る始末。
「き、京夜……様?」