オレ様専務を24時間 護衛する
「これからは、俺にそんな風に頭を下げるな」
「へ?」
俺は指先を揃えて会釈する松波の手をそっと掴んだ。
もう、俺に頭を下げる必要はない。
――――そう、伝えたくて。
なのに………。
「ですが、これは仕事ですので……そういう訳には……」
「ッ!!…………はぁ………」
まさか、こんな展開になるとは思ってもみなかったから
今までのコイツ………いや、この子に対しての態度を
白紙に戻したくても……今となってはどうにも出来ない。
この子にとって、こうして今いる時間も仕事の一部で
俺という存在は『護衛対象者』でしかないのだろう。
あんなにも逢いたかったあの子がこの子だと解り、
俺はこんなにも動揺しているというのに、
この子の記憶の片隅にいる幼かった俺は、
きっとさして逢いたいと思うような相手でもなかったのだろう。
はあぁぁぁ………。
何だか、2度フラれた気分だ。
俺は動揺を隠し、出来るだけ優しい表情を作りながら。
「もう遅いから休んで………おやすみ」
「はい。………おやすみなさい」
俺の言葉なんて届いてない。
松波は再び会釈した。