オレ様専務を24時間 護衛する
俺の視線をロックする……とある場所。
白い半袖シャツの袖口に近い部分に、
少し攣れたような手術痕が視界に入った。
母親が言っていた……傷。
肘部分の少し上、上腕の下部にそれはあった。
およそ5㎝程の傷痕。
嫁入り前の娘の肌に一生消える事の無い傷。
それを負わせたのは……紛れもなく、この俺だ。
差ほど目立つような傷では無いから
目を凝らさないと解らないかもしれない。
だけど、そんな事は関係ないんだ。
この子の腕に『傷痕』があるという事実だけで
俺が背負う責任の重さに変わりはない。
それと、母親は肩にもあると言ってたな。
さすがにそれは確認出来そうにないが、
手術したという事実があるのだから、確認の必要はない。
それに、手術痕のような目立つ傷でなくとも
きっとこの子の身体には数え切れぬほどの傷痕がある筈だ。
「………どうかしましたか?」
「ん?……いや、なんでもない。……食べるとするか」
「はい。………戴きます」
「ん」
嬉しそうにケーキを一掬いして口へ運ぶ姿を
…………俺はじっと見つめていた。