オレ様専務を24時間 護衛する
「あっ、でも………」
「ん?」
1つだけ、気になる事がある。
昨日のあの状況下で何となく聞けなかった事。
私の事を『キスした子』として記憶してたのかしら?
それとも、『ヘアピンの子』として?
空港でいづみさんが投げつけたあのヘアピンが、
昔、自分の家に来た女の子の物だと知っていた。
………それが、私の物だとは知らなくても。
更に、いづみさんが『私になりすまして』と言った。
それって………どういう意味?
話の軸的な部分が分からない。
「ねぇ、お母さん」
「……何?」
「このヘアピン、どこで無くしたか覚えてる?」
「え?」
私は塗装が剥げかかっている星のヘアピンを見せた。
「希和、………覚えてないの?」
「………え?…………それって、お母さんは知ってるって事?」
「えぇ、覚えてるわよ。滅多な事じゃ泣かない希和が号泣したんですもの」
「へ?」
私が号泣した?
………そんな記憶ない。
武術をする上で『人に弱みを見せるな』と教わった。
だから、涙する事を封印し
泣きたい時はトイレで1人泣いていた……筈。
それって、いつの話かしら?