オレ様専務を24時間 護衛する


脳内で物凄い速さで疑問符が駆け巡る中、

横に腰掛けている母親は至極楽しそうにしている。


「ちょっと、お母さん!」

「ん?………何かしら?」

「娘がこんなにも悩んでるってのに、何でそんな暢気な顔してるのよ」

「えぇ?…………だって、物凄~く楽しいんですもの♪」


母親は眉間にしわを寄せる私の顔を覗き込み、頬を綻ばせている。


もう、考えれば考えるほど混乱するばかり。

こういう時は1つ1つひも解くしかないよね?


私は手のひらに収まるピンを見つめ、


「何で塗装なんかしたのかな?」

「え?………それは決まってるじゃない」

「は?決まってるって、何が?」


首を傾げる私の手からピンと抓み、


「ほら、ここに『キワ』って名前が書いてあるもの」

「………だから?」

「ホント、鈍感な子ね。………他人の名前が掘られているピンを自分のモノだとは言えないでしょ?」

「……あっ」


それもそうか。

私になりすまそうと考える時点で、

ここに名前が刻まれてたら困るよね?

自分の名前を『キワ』だと偽る以外は……。


じゃあ、何故、私になりすまそうとしたの?

……問題はそこだよね?


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