オレ様専務を24時間 護衛する
今のは、幻聴……だよね?
京夜様のお相手が、私だって聞こえなかった?
瞬きも忘れ、首を左右にブンブン振っていると
そっと私の背中を優しく擦る母親。
その瞳はとても慈愛に満ちている。
大切な一人娘に冗談を言っている顏では無い。
って事は……―――………。
「事件性を未然に防ぐ為の武術は勿論の事、和洋折衷の調理方法や食材の選び方、身の回りのお世話をする為の家事全般。そして、2人の趣味にと……バイクの免許に至るまで。全ては希和が妻になる為の素養だったのよ」
「……………」
母親の言葉に心臓が停止しそうになった。
悪い冗談を言っているようには見えないし、
思い返してみると、おかしな点が幾つも思い当たる。
バイクにしたって、料理にしたって。
彼の趣味嗜好にピタリと合う事に不思議でならなかった。
まさかまさか、この私がだなんて、誰が思う?
京夜様だって、一言も言ってなかったのに。
相手が私だと知らないって事?
「お母さん」
「ん?」
「この話、無かった事には出来ないの?」
「へ?」
「例え、『御影』を敵に回したとしても……私には分不相応だよ」