オレ様専務を24時間 護衛する
希和side
実家から京夜様のマンションへ戻った私は、
玄関のドアを開けて異変を感じた。
出掛ける前は確かに空気清浄器が正常運転していた筈。
なのに、ドアを開けたその瞬間に
玄関まで届くほどの甘い香りが充満していた。
私は不思議に思いながらも部屋の中へ足を踏み入れると、
「只今戻りました~………えっ?………き、京夜様、どうされたのですか?」
「………ん?」
自分の目を疑う状況に思わず固まった。
だってだって、彼がキッチンで何やら料理をしてるじゃない!!
シンク周りや床のあちこちに白い粉が撒き散らされ、
彼の手元は茶色いクリームが至る所に付着している。
既にほぼ出来上がっているそれは、
見た目はかなり歪な状態だがケーキだと直ぐに分かった。
恐らく初めてであろうこの状況で
しっかりと膨らんでいる事に感心してしまった。
…………初めて焼いて膨らませられるだなんて。
私だなんて始めの頃は、
何度焼いても膨らまなかったのに……。
何をやってもそつなくこなせる人って、
いる所にはいるものなのねぇ。