オレ様専務を24時間 護衛する
けれど、見れば見るほど腑に落ちない。
だって、彼は甘いモノが大の苦手。
特にクリーム系は拒絶するほど嫌いなのに。
なのに、自ら必死に作ろうとしているって事は、
――――――もしかして、私の為に?!
母親が言っていた。
幼い頃の少女と今の私が同一人物であると認識したからには
きっと、今までとは違う筈……だと。
「私の自惚れかも知れませんが、………こ、これは、……私の為にですか?」
魔王の逆鱗覚悟で尋ねると、
「……………否定はしない」
「ッ?!」
やっぱり!!
逆ギレして言い返して来るかと思ったのに
あっさりと認められると、何だか調子が狂う。
彼は苦笑いしながら、溜息を零した。
こんな風に照れながら、
でも必死に私の為にケーキを作ってくれるだなんて。
やっぱり、本当の彼は優しい人なんだ。
きっと、魔王のような阿修羅相も
ドスの効いた魔声も
視殺するような雷魔ビームも
本当の自分を誤魔化す為の作り上げた人格。
だって、今の彼からはそんな雰囲気が微塵も窺えないもん。
そう思うと、やはり可哀想な人だと思えてならない。