オレ様専務を24時間 護衛する
「凄い凄いっ!凄ぉ~いッ!!見て見て、京夜様~!!」
「フッ、あぁ、見えてるって」
今年は大豊作のようで、
大粒の黒真珠が枝から零れんばかりに垂れ下がっている。
そして、そんな巨峰を目にした彼女は
中途半端に腰を折っているのにもかかわらず、大はしゃぎ。
難点なのは、俺らが長身という事。
葡萄の樹は低く誂えてある為、
俺らの身長では移動するのも至難の業。
「京夜様」
「ん?」
「ここら辺が平らなので、お借りしたシートをここに敷きますから休んでて下さい」
「は?」
「私はお土産の分も兼ねて、もう少し採って来ます!」
「フフッ、分かった。あまり採り過ぎるなよ?」
「はぁ~い♪」
彼女の視線は俺でなく、
既に少し先にある巨峰に向けられている。
きっと、採りたくて仕方ないのだろう。
彼女が楽しめているのならそれでいい。
俺は彼女が敷いてくれたシートに座り、
籠いっぱいに巨峰を詰めている彼女を微笑ましく眺めていた。