オレ様専務を24時間 護衛する
「嫌な想いを沢山させて、すまなかった。何度礼を言っても言い足りないが、本当に感謝している」
「えっ、えっ……」
突然、神妙な面持ちで深々頭を下げる彼。
初めて見る彼の姿にどうしていいのか分からない。
「えっ、ちょっ……ちょっと、頭を上げて下さい」
「………」
彼の腕に手を添えても、上げる気配すらなく困り果てる。
「解りましたから、とりあえず頭を上げて下さい!」
しゃがみ込むようにして彼の顔を覗き込むと、
薄らと目の淵に光るものが浮かんでいた。
益々パニクる私は必死に笑顔を作り、
「仕事としてした事なので、お気遣いなく……」
体裁のよい言葉を並べてみたものの、何の意味も持たず。
暫しの沈黙の後、
ゆっくりと顔を上げた彼は目をギュッと閉じていた。
そんな彼を私は、ただじっと見守っていた。
何か言いたい事があるように思えてならなかったから。
そして、夜の住宅街の一角で
静けさと共に緊張感が漂う中、
―――――彼がゆっくりと瞼を開けた。
すると、
「松波」
「…………はい?」