オレ様専務を24時間 護衛する
「出過ぎた事だとは存じておりますが、私が京夜様のもとを離れたら、京夜様は………お気に召さぬ女性とご結婚させられるのでは?」
―――――特殊任務を賜った日。
私は彼のお母様から聞いている。
私をクビにしたら、ご両親が薦める令嬢と結婚するのだと。
『女嫌い』の彼にとって、
結婚自体が受け入れられないのかもしれないが、
忘れられない女性の為に
今まで結婚を拒んで来たのかもしれないと私は思った。
だから、彼が望まない結婚を阻止出来るのなら
少しでもお役に立てるのでは……と思っていた。
私の質問に一瞬眉を顰めた彼。
けれど、すぐさま表情は一変して……。
「フッ、貴様如きに心配されるとは俺も落ちぶれたものだな」
「………」
「いいか、よく聞け」
「………」
「俺が誰と結婚しようと、お前には関係ない。人の心配するよりも、自分の心配をしたらどうだ?」
「ッ?!」
「フッ、………精々、頑張るんだな」
嘲笑しながら踵を返し、車へと歩み進める。
そんな彼の背中をじっと見つめていると、
「……………元気でな」
本当に微かだが、最後に聞こえた言葉は
―――――――優しい彼の声だった。