オレ様専務を24時間 護衛する
俺が彼女の為に出来る事。
それは、俺が俺でなくなれば済む事だった。
過去を捨て去り、慾も捨て去る。
それと同時に『夢』や『希望』も抱かぬと決め、
作られた『御影京夜』を演じながら、
世間に従順な財閥の跡取りになる事だった。
これまでの彼女の努力が無駄になるかもしれない。
けれど、この先の長い人生を
たった1人の男の為に無駄にして欲しくなかった。
俺がそれ程の存在に値しない限り、
到底納得出来る筈もなく………。
それ程の男になるのにこの先何年かかるか分からない。
それまで、彼女を拘束する事すら間違っていると思った。
俺に俺の人生があるように、
彼女には彼女の人生がある。
ほんの少し手を伸ばせば届く距離。
―――――僅か30センチ
一歩踏み出せば、抱き締める事だって出来る距離で
俺は彼女に最悪な自分を曝け出す。
傲慢で御曹司ぶって、常に上から目線で。
自分で口にしていて、ヘドが出る。
それくらい最悪な男だ。