オレ様専務を24時間 護衛する


罵声とも思える言葉を浴びせているのにもかかわらず、

彼女は思っていた以上に冷静だった。



毎日のように浴びていたせいで

俺の言葉にも慣れてしまったのかもしれない。


そんな風に思うと、

ますます彼女には悪影響にしかならない。

――――――俺の存在が。



彼女が俺の事を想い、

俺の行く末を心配してくれた言葉。


ただそれだけで俺は乗り越えられそうな気になる。

俺の事を一瞬でも案じてくれた事、その気持ちだけで。



だからこそ、彼女への未練を断ち切るために

俺は最後の勇気を振り絞って蔑視する。



反論出来ぬような言葉を並べ、

これ以上気遣いすらさせないように……。





彼女の揺れる瞳を

これ以上、見たくなくて


俺は心に幾重にも鍵を掛けて踵を返した。



15年以上も前に一度かけた鍵。

心の奥にあるパンドラの箱を封じるその鍵。

やっとの想いで開けたというのに

こうしてまた自ら鍵を掛けなくてはならない。


けれど、これも全ては―――――彼女の為。



俺は彼女に聞こえぬ距離まで歩き進め、

最後の最後に心の声を零した。


「……………元気でな」


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