オレ様専務を24時間 護衛する
19 決意
京夜side
愛車に乗り込んだ俺は、
奥歯をグッと噛みしめ車を発進させた。
無意識にルームミラーに視線が移り、
つい先ほどまで手の届く距離にいた彼女が映っていた。
今すぐ引き返して抱きしめたい。
さっき言った言葉も冗談だと白紙に戻したい。
何もしなくていいから、傍にいて欲しい。
溢れそうになる想いを必死に堪え、
俺は無心で車を自宅へと走らせた。
自宅へ到着したものの、
360度から虚無感が襲い掛かってくる。
ガランとした室内。
いつもと何ら変わらない景色なのに、
そこには今朝まであった筈の物が跡形もなく消えている。
リズミカルで心地いい包丁の音も
食欲をそそる美味しそうな匂いも
柔らかな笑顔で『京夜様』と呼ぶ彼女の姿も
あれは全て幻だったのだと思わせるほど……。
あるのは無機質に時を刻む秒針の音と
彼女が居た痕跡を跡形もなく消し去る空気清浄器の音。
そして、無意識に零れ出した俺の溜息。
俺はそんな現実から逃げるように自室へと駆け込んだ。