オレ様専務を24時間 護衛する


夕方になると、母親はお隣りのご夫婦と観劇に出掛けてしまった。

父親は仕事で数日家を空けるらしい。



私は母親が用意してくれた夕食を済ませ、

自分で淹れた紅茶を片手に自室へ向かう。



今頃、京夜様は何をしてるかしら?

新しいお世話役の人が夕食の準備をしてくれたかしら?


最近、少しずつ夜は冷えるようになって来たから

寝室の室温を1~2度上げないと……などと、

無意識に彼の心配をしている自分に気が付いた。



―――――ダメだわ。

完全に抜け切れない。


仕事復帰したら、忘れる事が出来るかしら?



溜息混じりにベッドサイドに座ると、

少し離れた壁際に並べられた品々に視線が移る。



女嫌いの彼がこれらの品物を自ら選んだという事は、

少なくても数人の女性店員とやり取りした事になる。


………私の為に?

謝罪と感謝の気持ちだと言っていたけど

それ程の価値が私にあるのだろうか?



悶々とする頭で、母親に言われた言葉を思い返す。


――――彼の護衛の任から解かれた理由


全てはそこに隠されているような気がする。




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