オレ様専務を24時間 護衛する
彼はもうじき、見目麗しき女性と結婚する。
庶民の私が『好き』だと言って、何かが変わる?
………変わる筈が無い。
母親が尋ねた言葉。
『京夜さんが何故、希和を元の生活へ戻したと思う?』
あの時はその言葉の意味が理解出来なかったが、
今なら何となく解った気がする。
私を女性として思ってくれたと仮定して、
綺麗な女性と結婚し、
幸せな生活を送る姿を間近で見守らなければならないという現実。
きっと、彼なりの優しさから取った行動だろう。
だからこそ、私に『女性』としての倖せを掴めと言ったんだ。
それは、貴方でなければ意味が無いというのに……。
気付いてしまったからには隠す事なんて出来ず、
次から次へと溢れ出す感情に翻弄される。
どうにも出来ない。
どうしようもない。
私に出来る事なんて何一つない。
初めて味わった『好き』という感情も
一瞬で『失恋』へと切り替わる。
何で、なんで……という後悔の念だけが鮮明で……。