オレ様専務を24時間 護衛する
現在、22時を回ろうとしている。
当然、社内に人の気配はない。
俺は警備用通用口から外に出て、車に乗り込んだ。
会社から自宅までの道のりは2キロちょっと。
大通りを進めば、数分の距離だ。
自宅へ帰った所で何もする事が無い。
最近、不規則な生活のせいでツーリングも控えている。
自宅にはただ寝に帰るだけ。
今日も何か食べ物でも買って帰るとするか。
これまで、コンビニやスーパーといった店舗には
仕事の偵察で行く以外に入った事が無かった。
けれど、食事の世話をする者を雇っていないのだから
自分で食べに行くか、調達しない限り飢え死にする。
会社では出前を取っているが、
何故か、自宅へは呼びたくないんだ。
2週間近くそんな生活をしていて、気付いてしまった。
『彼女が住んでいたあの家に他の者を入れたくない』
俺の身勝手かもしれないが、
彼女の痕跡が全て消えてしまいそうで怖いんだ。
だから、家政婦も雇わず護衛役も雇わず、1人でいる。
………本当に俺って、不器用過ぎるな。