オレ様専務を24時間 護衛する


黒い壁の家。

その家の隣りにオレンジ色の屋根の白い家がある。


―――――彼女の家だ。



閑静な住宅街。

前回、ここへ来たのは

彼女と最初で最後のデートをした日。

嫌でも思い出してしまう記憶。



彼女の家の前に静かに車を止め、

窓からこっそりと様子を窺う。


2階の電気が消えている。

もしかして、もう寝てしまったのだろうか?



愛車の助手席で気持ち良さそうに眠る彼女の姿を思い出す。



こんなにも近くにいるのに

偶然でも一目見る事も無いのだろうか?



22時半を回ろうとしている住宅街は

人の気配すらなく、静まり返っていた。



たった一度でいい。


奇跡がこの世に存在するのなら、

一瞬でいいから窓際に現れてくれないだろうか。



俺は必死に念じながら視線を向けるが、

窓際に人の気配が現れる事は無かった。



きっと、これが俺と彼女の縁の終わりを告げる合図なのだろう。



フッ、俺は何をしてるんだか。


彼女の家から視線を逸らし、自宅へと車を走らせた。


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