オレ様専務を24時間 護衛する


先輩はこの数カ月の事をしきりに尋ねて来るが

それに対して、返す言葉は………。


「プライベートな事なので……」


何度聞かれても教える事は出来ない。


それは『御影』だからじゃない。

彼の事を1つでも口にしたら、

堰を切ったように今にも溢れそうだからだ。





ついつい先輩のハイペースに呑まれ、

生中3杯目が飲み終わる頃、

居酒屋に入って来たスーツ姿の男性が目に留まった。


細くしなやかな指先で

男の色気を漂わせネクタイを緩め始めた。



――――京夜様に逢いたいよ



酔うとニコニコになる筈の私が

今日ばかりは涙が止まりそうにない。



「おっ、おいっ!ど、どうした?!」


突然に涙を流す私を見て先輩が動揺し始めた。


「わっ、分かんなっ………」


咄嗟に両手で顔を覆うようにして俯いたが

必死に溜め込んでいた感情が一気に溢れ出してしまった。


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