オレ様専務を24時間 護衛する
クローゼットから旅行用スーツケースを取り出し、
次々とそれに服を詰め込んでゆく。
その他には化粧道具や愛用の小物類に至るまで。
ヨシ、とりあえず、これくらいで大丈夫だよね?
自分に言い聞かせるように最終チェックを施した。
カーテンを閉めて、
携帯や手帳、お財布等を入れたバッグを肩から下げた。
そして、壁際に置いておいた彼からの贈り物も手にして。
私は気合を入れて1階へと下りた。
キッチンで夕食の準備をしている母親に、
「お母さん、ごめんね」
「ん?…………どうしたの?!」
エプロンで濡れ手を拭きながら振り返った母親。
私の状態を目にして驚いている。
そんな母親に私は笑顔で、
「今から家出するから!!」
「へ?…………家出って、言ってから出るもの?」
「ちょっと、聞くところそっち~?」
プクッと膨れて母親を見ると、
「だって、希和が嬉しそうにしてるもの。心配はしてないわ」
「………ありがとう、お母さん」
歩み寄って来た母親に思わず抱きついた。