オレ様専務を24時間 護衛する


「京夜さんの所に行くのね?」

「…………うん。入れて貰えるまで頑張るつもり」

「そう。…………頑張りなさい」

「うん」


優しく背中を擦る母親。

美味しそうな匂いが微かに香って来た。


「ご飯、食べれなくてごめんね」

「いいわよ、そんな事……気にしなくて」


優しい笑みを浮かべる母親に小さく頷くと、


「ほら、漸く向き合う気持ちになれたんだから、早く行きなさい」

「うん!!………行って来ます」

「………行ってらっしゃい、気を付けてね」


軽く背中を叩かれ、自宅を後にした。




区役所前まで歩いて行き、そこでタクシーを拾った。


京夜様のマンションまで5キロ弱。

差ほど遠く無い筈なのに、今日ばかりは遠く感じる。


「運転手さん、急いで下さい!!」



1分1秒でも早く逢いたくて………。

もし、ツーリングに行くのならお供したい!!


………もし、帰宅して来た彼の横に女性が……居たら?


ダメダメダメダメ!!

マイナスの方向に考えちゃダメ!!

陰の気を呼び寄せちゃうじゃない!!


私は両手をギュッと握り、ひたすら祈っていた。

―――――私の事を忘れていませんように。


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