オレ様専務を24時間 護衛する


マンションのエントランス前にタクシーは停車した。


このエントランスを通るのは今日で2回目。

初めて来た時以来、ここを歩いて通った事は無い。


いつもなら、エレベーターで直接地下まで降りていたから。



エントランスのインターホンを鳴らすが返答が無い。

まだ帰宅してないのかしら?


……どうしよう。

鍵を返してしまったから、

ここからどうやって中に入るの?


大きなスーツケースと大柄な女が

高級マンションのエントランスでウロウロしている。


どこから見ても怪しい人、そのものだ。



いいアイディアが浮かぶ事なく考え込んでいると、

突然、エントランスの硝子の扉がウィーンと開いた。


「あの、もしかして、御影様の所にいらっしゃった………」

「あっ?!萩原さんッ!!」

「あぁ~やっぱりそうでしたか。エントランスからいらっしゃる事が無かったので、気付くのが遅くなってしまいました。申し訳ありません」

「いえ。気付いて下さって、本当に助かりました」


笑顔でスーツケースを持ち上げ、

エントランス内へ運んでくれる彼。

このマンションの専属コンシェルジュ・萩原さんだ。


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