俺は使用人、君は姫。

新しい仕事

…姫に、いや…姫様に、関わってることだと香蓮は言っていた。

王様直々、俺に姫様関連の話とは、一体どんなことなのだろう。


「…王様から話があると伝えられて来たのだが。」


王室前に立っている防衛士に声をかけた。


「ちょっと、待ってろ。」


使用人とは、王宮で働く者全部を丸く収めた言い方で、防衛士も使用人ということになる。

ただ、王族、王室、厨房諸々、どこに属するかで、呼び名が違う。

俺は、元姫専属執事で、それなりに良いとこに属していた。

だが今は、こともあろうことか雑用係。


「紅羽、いいぞ入って。」


「…失礼します。」


後ろで、静かに王室の扉が閉まり、俺は片膝をつく姿勢で頭を下げた。


「いや、そうかしこまらなくて良い。顔を上げてくれぬか、紅羽。」


「はい。では…。」


俺は顔を上げた。

そして、そのまま硬直した。

目線の先、王様の隣に姫様がいた。

こんなに近くで見るのは何年ぶりだろうか。


「紅羽、話というのはだな。」


「あ、はいぃっ。」


姫に見とれていて、思わず声が裏返ってしまった。


「どうかしたのか?」


「い、いえっ。すみませんでした。」


「なら良いのだが…。紅羽、そなたには新しい仕事に就いてもらおうと思い、今日ここへ呼んだのだ。」
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