耳飾りの女
耳飾りの女
表通りから少し奥まった場所にその店はある。

〈黒猫〉。

店内は、柔らかな黄昏色の照明が綺麗な色を放っていて洒落ている。



私、深田舞(ふかだ まい)。
二十四歳。
職業は弁護士。

といっても実績のある弁護士の事務所で働く新米弁護士だ。

〈黒猫〉は、そんな私が彼氏と待ち合わせによく使うバーだった。

私は彼氏が来るまでの時間、カウンターでモスコミュールを飲む。

バーテンダーの青年が、甘ったるいものが苦手な私が好むカクテルを、何度もここで顔をあわせている間に覚えてくれたのだ。

彼は背も高く、整った顔立ちの、色気がある青年だった。

私が彼氏を待つ時間にも、穏やかに話かけてくれる。

私の携帯が鳴った。

『ごめん』

携帯電話を耳にあてると、低い彼氏の声が聞こえた。
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