break down
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「サキ先輩来ましたよー」

一応今日の幹事に声をかける。居酒屋に辿り着いたのは指定された時刻より20分程経った後。少し遅れた程度なのにもかかわらず周りはとうにできあがっていて、その騒がしさについ眉をひそめた。

「お、ゆゆ」

お疲れ、と手元のグラスを渡されたのでお礼を言ってそれに口をつける。飲み放題だから好きなの頼みな、と渡されたメニューの中からピーチサワーを選ぶ。サキ先輩はすぐさま店員を呼んで頼んでくれた。なんてスマートな。

「…優介、」
「そいつの話はしないでください」

先輩がその名を口にした瞬間遮ると苦笑された。まあ誰かに聞かれるだろうなとは思っていたけれど。わかっていても口調は強くなる。

サークルの忘年会。よりによって日付は12月25日。まず間違っても恋人のいる人は来ない。来たとしても恋人連れだ。

喧噪を避けるように先輩の陰に隠れ、運ばれてきたピーチサワーをちびちびと無言で飲む。もともと来る予定ではなかった飲み会。一人でいるよりはいいかなと思って参加したけれど、急遽参加した私を幹事のサキ先輩は心配していたのかもしれない。
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