お隣さん家のお兄ちゃん
 
それからしばらく理央くんは寝てくれなくて、強制的に電気を消してベッドに入った後も、あーだこーだとセクハラめいた言動は続いた。

「でね、巨乳のヨウコちゃんが女の武器フルに使って来るもんだからー…っていうか腕を組んでおっぱい擦り寄せて来んだけどね。
あんまりにもあからさまだったから俺すっかり引いちゃって、それで帰ってきたの。
やっぱさあ、俺には皐月みたいなんが丁度良いと思うわけ。
って事でどうですか今夜、一発ヤっちゃうって言うのは…──」
「黙れ、はやく寝ろ」

理央くんはドMだと思う。
だって、こうやって「ヤろうぜ」的な発言を繰り返す事はしょっちゅうだし、同じだけ私はそれをキッパリとお断りしてるのに、理央くんはまたもや同じ事を繰り返す。
断られる事を解ってて、それでも尚、懲りずにまた繰り返すのだ。

私が理央くんに背中を向けて、本気で寝る体制に入ろうとしたら、理央くんの身体が後ろから静かに密着してきた。

「…理央くん、いい加減に」
「まって、ちょっとだけ」
「は?」
「ね、お願い、皐月」

さっきまでとは違う声色に黙り込む。
どうしよう、理央くんが甘えたモードに入ってしまった。

「シャンプーの良い匂い…」
「ちょっと!理央く…っ」

うなじにキスを落とされる。
くすぐったくて身を捩ると、クスッと小さく笑われた。

「かわいい」

理央くんのスイッチは、とっても分かりにくい。
スイッチっていってもSとMのスイッチな訳だけど、理央くんたら普段はMなくせして、何かの拍子でSに豹変する。

腰に回された腕の力が強い。
うなじにはまだ理央くんが居て、私は極力頭を前のめりにする。

「無駄」

なのに理央くんってば事もあろうか私のおでこを抑え付けて、それさえもを不可能にした。


本気で喰われちゃうんじゃないか、という考えが頭を過ってあたふたする。
瞬間、理央くんにペロリとうなじを舐め上げられた。

…ビックリし過ぎて、もう声も出ない。

「理央くん、やめ…」
「…あ、来ちゃった」
「え、来ちゃった?」

「…なにやってんだよ、お前ら」

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