お隣さん家のお兄ちゃん
理央くんの言葉に疑問を抱いたとほぼ同時に、聞こえたのは明らかに怒気の含まれた声。
私と理央くんしか居ない筈のこの状況には、とても相応しくないと言える。
「あれ……、遼?」
「お帰り遼ちゃん」
急いで駆け付けました感が否めない出で立ちの遼が息を荒げながら睨み付けて来る。
その目付きは馬鹿みたいに鋭くて、私は目をシバシバさせた。
「皐月になにした」
「…うなじ舐めた」
「殺す」
もはや正気を失い掛けている遼と、Sモード理央くんはやはり何処か似ていた。
こういう時、二人が兄弟なんだと改めて思い知らされたりする。
遼が拳を振り上げたのと同時に、わたしはハッと我に返った。
つか、遼がキレてる意味が解らん。
「やぁだ、なんで俺がお前に殺されなきゃなんないんだよ」
「黙れ、クソ野郎」
「まあ!遼ちゃんったら偉大なるお兄様に向かってなんて口の聞き方!」
とりあえず遼はマジで怒っている訳だから、理央くんのおちょくった様な言動がムカツクっていう心理は分かった。
でも。
「…でも遼だって今の今まで女の子と一緒だったんだよね?」
私の言葉に遼の動きがピタリと止まる。
「私、知ってる。遼が色んな女の子と遊んでんの。
人の事をとやかく言うんだったら、まず自分の行動改めなって」