ナキムシとポチ
「なんで泣いてるんですか?」
家から駅三つ向こうの公園で、そいつの方こそ泣きそうな顔で俺にそう話しかけてきた中学生が居た
俺はそいつを一瞬だけ見て、無駄にきれいな顔のガキだと思ったけどそれ以上は興味もなく、シカトしてただ無言で出る限りの涙を絞り出すように流してた
明らかに無視したんだから、勝手にどっか行くだろうと思ってたそいつは、しばらく「どうしよう」って風に立ってたかと思うと、俺の横に腰を下ろしやがった
「・・・どっか行けよ」
「あの・・・でも。泣いてる人を放っては帰れないです」
どんな素晴らしい教育を受けて育ったのか、そいつはそう言って動こうとしなかった
――あぁ。めんどくせぇ
「ポチが。・・・死んだじいちゃんが俺にくれたペットが死んだんだよ」
俺は言えば気が済むのかという風に
けど本当は二度と会うことがない奴になら聞かせたくてそう言ってまた泣いた
俺はそいつを、もう一目も見ずにただボロボロと泣いて
そいつは困ったように言葉を詰まらせて地面と俺を何度も目で往復して
そして
「わ・・・わんっ」
・・・
―――いやぁ
引いたね。
気分もアレだけど、涙も。
「・・・はぁ?」
ようやく顔を上げてそいつを見ると、なんだか顔を真っ赤にして俺に一生懸命語り掛けてきた
「俺がっ!ポチになりますから!あの、俺人間ですけど、代わりは務まらないかもしれないですけど、でも頑張りますからっ」
――え、何言ってんの
もしかしてヤバい奴?イっちゃってる?
「だから・・・あの、泣かないでください」
―――次の日学校で一年のピンのついた制服着てこの中学生(だと決めつけてた奴)が俺に会いに三年の教室に来た時には、泡吹きそうになった・・・