ナキムシとポチ
足がもつれそうなポチをぐんぐん引っ張って俺の歩幅で突き進んだ

人気のない校外の裏道まで出てやっと足を止めた

「・・・先輩ッ、俺なんか怒らせることしました?」

胸を押さえて苦しい呼吸を整えながらポチが不安気に言うのを俺は睨んで返した

「おまえは俺のもんだろ!裏切るのかよ?!」

いやになったのか
パシリなんかするような人間じゃねぇって気付いたのか
俺なんかにくっついてたって何もいいこと無ぇから、だから当たり前に女つくる気なのか
チヤホヤするよりされる方が向いてる完璧な奴だって誰かが教えたのか

―――くそっ
こんな気分あれ以来だ
三ヶ月前のあの日以来だ


「・・・二回もペット失うのはイヤ、ってコトですか?」

ポチがなんとなく自嘲的な笑みを浮かべて俺の質問に質問で返した


ペット


そうだよな。ポチだ、こいつは
死んだポチの代わりになるって言った二代目ポチだ

「・・・チガウ」

俺の口からは、そう無意識に出た

違うよ バカヤロウ


「ペット・・・失ったうえに、大事な奴まで俺の側からいなくなったら・・・ツライんだよ」

泣くなって言ったじゃねぇか、おまえあの時
なのにおまえが泣かすのかよ

目尻が熱くなりそうになりながら奴を見据えてると、
ポチの丸くなったデカイ目が細くなって垂れ下がった




「いなくなりませんよ、俺。――さっきのもう一回訊いてもらえますか」

「・・・え、どれ」

「おまえは俺ンだろ、ってヤツ」

――顔が、熱い

「・・・俺の、もんだろおまえは」

「はいっ!俺は先輩のもんですよっ」


あぁ・・・やられた。完璧野郎に謀られた


やっと気付いた間抜けな図の俺


「・・・言わせただろおまえ」

「気付かせたんですよ。先輩いつまでたっても俺のこと頑固にペット扱いするから」

好きなくせに、って言葉が見え隠れして従順なはずの美少年が黒く見える

――くそ、これだから頭のいいヤツは
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