ブルームーン【タブー】
ブルームーン
「へぇ、珍しい。今日は一人?」

 漆黒の天然ウェーブのかかった髪がやたらと良く似合う美形の朋樹が、久しぶりに一人で飲み会に参加している私に声を掛けてきた。
 他にいっぱい参加者は居るんだから、わざわざ頃合いを見計らってカウンターに席を移している私に声をかけなくていいのに……。

 飲みかけのカクテルをことんとテーブルに置く。菫色の液体が優しくゆらめいた。

「朋だって、一人で飲み会にくるのなんて珍しいよね?彼女は?」

 朋樹は、私と翔が付き合い始める少し前に彼女が出来た。

 というより、長年三人で幼馴染をして微妙な関係で居た私たちが付き合い始めたのは、朋樹に彼女が出来たから、と言った方が正しい。幼稚園から大学生になるまで三人で過ごしてきたのに、朋樹が勝手に抜け出したのだ。
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