ピエロ-私と中年男の記録-
彼の車で
確か、土曜か日曜か祝日。

昼過ぎから、私と妹と小指のおっちゃんで出かけた。

小指のおっちゃんの車は普通の車だった。


今思えば、お洒落とかではなく、

乗れたら良い。
走ったら良い。

そんな感じ。

どんな車がカッコイイかなんて知らない。

大人の友達と車で出かけることに、意味があった。

私、カッコイイ。と。


「小指のおっちゃん、ピエロ行っきょん??」

妹が聞いた。

「たまーに行っきょんよ。」


小指のおっちゃん、行っきょんじゃ…。


私はコワイ顔の男性を思い出した。


「お母さんもあんまり来よらんなぁ。二人は全然来んなぁ。」

小指のおっちゃんが聞いた。

「ほなって、テレビ見たいんやもーん。」

妹がおどけてみせた。小指のおっちゃんは笑っている。

「お母さんは、おっちゃんと違って、誰とでも仲良いなぁ。おっちゃんと違うわなぁ…。」

小指のおっちゃんは笑顔から、だんだん、寂しそうな顔になった。


「違う」って…。仲良ーしたいのにできんのかなぁ。


「今、何処行っきょん。」

私は話を切り替えた。

「知り合いの所行くけん、待っといてくれる??すぐ終わるけん。」

それから少しして、着いたのは、白い家。綺麗な花がたくさん植えられている。

花に水をやっている女性が木陰から見えた。

彼女はこちらに気付いて動きが止まった。

小指のおっちゃんは軽く手を上げて車を降りた。



女性は、笑いもしない。

< 13 / 38 >

この作品をシェア

pagetop