ピエロ-私と中年男の記録-
例えば
「お風呂、調子悪いわ。今日入れんで良い??」

ある日の夕方、母が言ってきた。

「えー。そうなん。イヤやなぁ。」

私は妹と声を揃え、一応残念がった。子供ぶっただけだ。


だって、大丈夫。お風呂壊れようが。



彼が来るから。



ぴんぽーん。



呼び鈴の音。



ほら。


新聞のおっちゃんが今日も私の様子を見に来た。


上がってもらい、普通に母がお風呂のことを話す。

「わかった。ほな、ねぇ達が晩飯終わった頃、来るわ。ねぇ。銭湯行こうな。」

新聞のおっちゃんが私に呼び掛けた。


「…うん。」

私は小さな声で言った。


御飯時やけん、一回わざわざ帰るんかなぁ…。気ぃ使っとんなぁ。



新聞のおっちゃんは家を出た。どこでどう時間を潰すのか。



「銭湯、銭湯ー。姉ちゃん、楽しみやなぁ。」

妹は喜んでいる。

私はまた、小さく言った。

「…どうかなぁ。」


「姉ちゃん??やっぱ、姉ちゃん冷たいなぁ。」


妹は口をとがらせた。



やっぱって何よ…

火傷や気にしてないわよ。


気が付くと、私は火傷の場所に手を添えているのだ。



また、彼は八時にやって来る。
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