ピエロ-私と中年男の記録-
周りの大人
ある日、母が電話をしていたのだが、どうも内容が私のことのようだった。

「そうなんよ。治療にまだ通っているんよ。ありがとう。心配してくれて。」

説明している。私のこと。
母が電話を指差しながら、私を見て、目で話してきた。


「話す??」


…あぁ。誰かわかった。一応私の気分をうかがっている。


私は手を差し出した。

母はにっこり。

私は口パクで

「あ・ん・し・ん・し・た??」

母はびっくりした様子で

「別に。」

と小声で言った。


「もしもし、小指のおっちゃん??」

私が話すと、受話器の向こうで、小指のおっちゃんが、すごく驚いているように感じた。

「お、おぉ…。久しぶり。」
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