ピエロ-私と中年男の記録-
うらはらに
ピエロには母に度々連れて行ってもらった。

時には妹も連れて。

時には友達も連れて。



「小指のおっちゃん」


そこには彼も居て。


一緒に遊べるのが嬉しかった。

大人の友達が嬉しかった。

夜に出かけてピエロでジュースを飲むのが嬉しかった。


「大人っぽい子供」

のフリが楽しくて。

心の中は、無邪気で。


子供だったから、大人の心情なんて、考えもしない。

子供だったから、大人と大人の関係なんて、考えもしない。

皆が皆、ピエロに集う、皆が皆、素敵な大人達、素敵な仲間達だと思っていた。




そうであって欲しかった。


流行っているわけではなく、固定の客が入れ違いで通うピエロ。


何かが変わったということを、幼い私が察するのは難しくはなかった。


思い当たるのは、あの日。

< 7 / 38 >

この作品をシェア

pagetop