残酷Emperor
「健二ー! おはよ♪」
私の顔を見てホッとしたような表情を浮かべる健二。
私達は気が向くとたまに、こうして一緒に学校へ行く。
家も近所である私達にとって、それは日課に近かった。
「お、おう。昨日はその……悪かった、な」
とぎまぎしながらそう言う彼がおかしくてぷっと笑ってしまう。
「なっ、なんだよ何笑ってんだよ! 」
すぐムキになる健二は、まだまだ子供だ。自分もガキの癖に、こうやって彼を分析するのが趣味な私も、相当おかしい。
だって、何年健二を見てきてると思ってるの?
「てか健二、私まだ許してないから完全に」
「は? どういう意味だよ」
健二の表情は険しくなる。
「だってー健二、昨日のメールにさあ……“先帰ってごめん”てあったじゃん」
「……それがどうしたんだよ」
どうしたって……。
「健二は先に逃げたんでしょ? 帰ったんじゃなくて! 私は変な男に絡まれて大変だったってのに……」
「……変な、男? 」
健二はさらに顔を険しくした。
「だからー! 健二が逃げたかわりに私が捕まったんじゃない! 桐嶋さんの"お兄さん“に!!」
「は? お兄……」
その時、背後で声がした。
「おはよう。“私の兄”が何ですか?」
ビクッと健二の肩が震えたのが分かった。
健二……。