残酷Emperor
だが……
「……だ、駄目だ。俺は諦めない」
今日の健二は珍しく私のアドバイスを聞き入れない。
(だーかーらー! 私は早く帰りたいんだって! 早く帰って録画した天空のテンペストとマギマギとLとサイコパスかもしれないを見たいんだってぇ!!)
「はあ? 健二、私を怒らせたいの? キレさせたいの?」
「……朱実。俺はアイツんちの番号を知っている。だから今から郵便配達人を装い“お前の”携帯からかける。この頑丈な塀が空いた隙に、お前はあの家に入り込め! 出来なかったらピンポンダッシュして帰って来い! そうすれば……さすがにあいつもビビるだろう……」
ふははははっと健二は笑う。
てかそれ不法侵入ですよ、犯罪ですよ。
しかも……なんでっ……ななな
「何で私!? あんたの携帯からかけて、あんたが行きなさいよ! 健二! あんた私に殺されたいの? ああん? 」
腰に手を当て健二を脅迫する。
「……駄目なんだ……」
消え入るような声で健二が言う。
け、健二……?
俯いている為、彼の表情はわからない……が……
「……健二?」
様子のおかしい健二の肩に手を置き彼の顔を覗く。
健二……そんなに私の事、信用して……。