残酷Emperor
その瞬間、私の中の何かがキレた。
だって、こいつうざいもの!
「お、お前が行ってこおおおぉい!!!」
健二の顔も見ずにくるりと背を向ける。
「は? おい、待てよおい! 朱実ぃぃぃっ!!」
そんな彼の私を呼ぶ声にもお構い無しでひたすら歩く。
はっきり言って、ムカついた。
ちょっとは期待した自分が馬鹿だ。
それに、あんなに必死になる彼を見て、チクリ、と胸が痛んだ。
ほんの、……ちょっとだけど。
ずんずんと振り返る事なく歩いていた時、
「待て!」
と言う声が後ろからした。
その時の私は、それが“誰"の声かも判断出来ないくらいに、興奮していたのだろう。
腕を掴まれた瞬間、私は……
「離せ! バカ健二!!」
と言い、掴まれた腕を振り払った。
だが、後ろを振り向き、
私はハッとし青ざめた。
だってその人物は……
“健二”なんかでは無かったのだから……。